八百長とは
八百長とは、「故意に負けることによって利益を得る」という、いかなる競技にあってもあってはならない行為である。特に、公平性の裏付けがあってこそ成立する公営ギャンブルにとっては、客の信頼を損ねる最も卑劣な行為であり、根幹から自己否定する行為に他ならない。
その一方で、八百長が存在しない競技など無いのではないかと思わせるほど、あらゆる競技において、八百長が認定されている現実がある。もちろん、噂されていても、実は八百長では無かったというケースもあるのだろうが、八百長と見做された時点で、見る者にとっては疑念が涌くため、純粋には楽しめないため、この点に関しては一点の揺るぎもないよう、徹底しなくてはいけない。
大相撲八百長問題
例えば相撲。なお、相撲の場合は、競馬や競艇など公営ギャンブルとは違い、賭博がらみでないために法律違反とはならない。だからといって許される行為ではないのは言うまでもないが。そして、相撲は私も子供のころから大好きでよく見ていたが、もちろん、八百長の噂があることは知っていた。
しかし、見ている方としては信じたくない事もあって、「千秋楽に勝ち越しを決めている力士が、7勝7敗の相手と取る時に、つい力を抜いてしまう。」程度の事はあっても、それを事前にやり取りして、しかも貸し借りや金で売り買いまでしていたなんて、信じられなかったし知りたくなかった。
これが、2011年に国会でも取り上げられるなど、大問題となった「大相撲八百長問題」である。本場所は中止され、結局2人の力士が解雇、58人が引退という大きな結果を招く。その中には、三役(小結)まで務めた白馬(はくば)や霜鳥(しもとり)の名前まであった。
他のスポ―ツにおける八百長
日本では、プロ入り5年で89勝し、事件さえなければ確実に名球会入りしていたであろう、池永正明が永久追放処分(2005年に復権)を受けるなど、多くが処分された「黒い霧事件」や、テニス界では、ジュニアデビス杯で錦織圭と共に日本代表として戦った三橋淳が、八百長へ関与したとして、5万ドル(約568万円)の罰金と永久追放処分を受けている。
海外では、ワールドシリーズを舞台にした「ブラックソックス事件」や、サッカーに関しても2006年イタリアの「カルチョ・スキャンダル」を始めとして数々の八百長事件が知られている。
競馬における八百長
古くは1971年のイギリス「エスケープ事件」(前日、単勝2倍で負けたエスケープ号が、翌日単勝5倍に落ちたところで、見事に勝利。)や、2011年には同じイギリスで起こった馬主2人、騎手5人、その他関係者6人という大規模な八百長が発覚し、大量の処分が下されている。
馬という動物を使う競馬は、八百長のやりにくい競技と言われる一方、逆に動物が主体であることで発覚しにくい(敗退行為なのか、単に走らなかったのかの見分けが難しい。)事もあってか、八百長が起こりやすい素地はあるのだろう。
日本競馬では、1965年の山岡事件が有名であるが、この事件はどうもスッキリしない。八百長自体は、その頃の競馬界では当たり前のように行われていたのかも知れないが、問題となった件については、レースをみても配当などから考えても、八百長の臭いはしない。
騎手や関係者に対する、警告のためのスケープゴートだったのではないだろうか。
山岡事件
天皇賞や有馬記念を勝ち、常にリーディング上位に入ってい中堅ジョッキーの山岡忞(つとむ)が、暴力団員から金品の供与を受けて、敗退行為を行ったという事件である。
山岡は競馬法違反で起訴され、懲役10月、執行猶予2年の実刑判決を受け、騎手免許剥奪と競馬関与禁止の処分を受ける。その後、生産牧場で働いていたというが、詳細は分からない。一説によると40歳で亡くなったという。これだけの騎手にしては、悲しい最期である。
その八百長とされたレースのひとつが、稀代のクセ馬で、人気で凡走・人気薄で勝利を繰り返し「新聞の読める馬」と言われた天皇賞馬、カブトシローに山岡が乗った時のものであり、これはカブトシローにまつわるエピソードとして語られる事も多い。
そのレース「たちばな賞」では、中沢騎乗のサンキュウプリンス(4番人気)と山岡騎乗のカブトシロー(6番人気)が示し合わせ、サンキュウプリンスを敗退させたというが、通常、八百長では1番人気の馬を敗退させ、それ以外の馬の馬券を買って儲けるのが常である。
よって、4番人気のサンキュウプリンスを敗退させる意味が分からない(1番人気が勝ってしまうと儲けられない。)こともあるし、パトロールフィルムを見た大川慶次郎や寺山修司も「どても八百長には見えない。」と語っていたという。
「八百長」の由来
さて、このような「わざと負ける行為」を何故、八百長というのだろうか。話は明治時代に遡る。
大相撲の年寄、伊勢ノ海五太夫と囲碁をよく打っていた八百屋の店主「長兵衛」、通称「八百長」は、実力がありながら商売を贔屓にしてもらう意図で、勝ちを伊勢ノ海に譲っていた。
しかし、ある碁会所で来賓として来ていた本因坊秀元と互角の勝負をして、その本当の実力を知られることとなった。この故事をもって、わざと負けることを「八百長」というようになったという。
「八百長」の噂
八百屋長兵衛の気持ちは分からないでもないし、誰も損はしていない。相撲の八百長は残念だが、こちらも懐は痛まない。やはりギャンブルにおける八百長は直接的にお金に係わることもあって、最も迷惑極まりない。
しかし、未だに八百長の噂が絶えない公営ギャンブルがある。もちろん、馬券や舟券・車券が外れた腹いせに「八百長や!」と5ちゃんねるに書き込まれるのは常であるが、これは根拠のない放言である。
しかし、一部、状況証拠からしてどうしても八百長の疑いが拭えないケースがある。それが一時期大きな噂になった「金沢競馬」である。
金沢競馬の噂
2018年6月、週刊誌報道を受けて、金沢競馬を主催する石川県が関係者の聴取などにより不正事実の確認を行い、「不正はなかった」とアナウンスをした。この報道以前から、金沢競馬には黒い噂が絶えない。
例えば「沖ダイブ」。この動画は私も見たが、思ったより酷い。これがもし八百長で無いというなら、騎手の腕が酷すぎて、どっちにしてもこの馬を買っていた人は浮かばれない。「沖ダイブ」で検索して一度見てほしい。
そして、「吉原寛人」。先日、念願のG1(Jpn1)の南部杯をサンライズノヴァで制し、地方ナンバーワンとも言われる騎手なのだが、やはりブラックな噂が絶えず、中央への移籍を希望するも、JRAから願書の受け取りを拒否されたとか。
ツイッターで告発をしている者もいて、オッズから見て「八百長予告」をするのだが、確かに、言ったとおりになっている。オッズもおかしい。
ただし、どれも噂に過ぎない。沖騎手も単に鞍が落ちただけかもしれないし、吉原の人気馬も単に凡走しただけなのかもしれない。オッズだって、地方競馬だから少しの金額で大きく動くし、人気薄でも個人的に「これだ」と思って賭けた者がいるのかもしれない。
しかし、最初に言ったように、「八百長」は「そう思われた」だけで、もうアウトなのだから、ここはもっとキッチリと調査し、情報を開示して、潔白を証明しなければならない。金沢競馬は私も買うし、吉原は上手いと思うから尚更である。
「八百長」は、あってはならない。これは主催者も選手も、そしてファンも肝に銘じて、少しでもその臭いを嗅いだなら、止めるよう努力をしなければならない。
(追記)
この記事を書いてしばらくして、競艇界に激震が走った。A1レーサーであった(逮捕時はA2)一流選手、西川昌希選手のモーターボート競走法違反による逮捕である。容疑は「故意にレースに負けた代わりに報酬を受けた」というもので、まさに「八百長」である。

逮捕に至るかなり前から、その不自然な負け方や舟券の売れ方によって、八百長の噂があった選手であった。火のないところに煙は立たないという事なのだろうが、そうなると、他にも同様の噂のある選手はいるため、この西川選手の逮捕によって八百長が撲滅されたかというと正直疑わしい。
ファンのため、競艇界の未来のためにもきっちり調査してほしいものだが、内部での浄化は難しいだろうから、是非「第三者委員会」のような組織に依頼して、この機会に完全撲滅してほしい。
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