はじめに
日本の公営競技と言えば、まず思いつくのが中央競馬(JRA)でしょう。ギャンブルに興味の無い人でも「武豊」や「オグリキャップ」「ディープインパクト」といった名前は聞いたことがあるでしょうし、テレビCMでも、例年、豪華な顔ぶれ(2022年は、安室奈美恵の「Hero」に乗せた長澤まさみ)を揃えており、毎日のように流れています。
そんな公営競技の雄、JRAの売り上げは3兆円(2021年)もの金額になっていますが、昨年との比較では3%少しの微増に終わっており、3%,5%,7%,11%,11%,12%と年々売り上げを伸ばし、ついには前年比35.7%と凄まじいスピードで増加し、売上2兆円を達成した競技があります。
それが「水上の格闘技」と言われるエキサイティングスポーツ、「競艇」です。こちらも中村獅童やゆりあんレトリィバァを使った印象的なCMが沢山流れており、記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、興味があっても、どうやったらレースを見たり舟券を買ったりすることができるのか、ご存じない方も多いかと思います。また、舟券を買うにしても、どうやって予想してどんな買い方をすればいいかも、最初のうちは全く分からないことでしょう。
そこで、ファンも多く、一般的にも知名度の高い競馬(中央競馬=JRA)と比較しながら、競艇の見方・舟券の買い方を説明していきたいと思います。初心者用として話していきますが、そういう私も競馬ほど詳しくはないため、初心者用の説明というより「初心者に毛の生えた程度のファンが、初心者に説明する」という程のものですので、ゆる~く聞いてください。
舟券の買える場所
まずは舟券を買う方法、買える場所ですが、その一つ目は競艇場です。北は群馬県の桐生競艇場から、南は競艇発祥の地と言われる長崎の県の大村競艇場までの24場あり、関東から中部、近畿、中国、四国、九州地方にくまなく配置されていますが、残念な事に北海道と東北地方には競艇場はありません。
また、水上の競技のため、競艇場は海(大村競艇など)、川(江戸川競艇)、湖(びわこ競艇など)、人工水面(住之江競艇など)を使って行われますが、日本海に面した競艇場は福井県の三国競艇場だけとなっています。
次に舟券が買える場所は、JRAでいう「WINS」(ウインズ)にあたる、場外発売所である「ボートピア」です。こちらは全国に56ヶ所あり、競艇場の無い北海道(ボートレースチケットショップ旭川)や東北(宮城県のボートピア大郷など6ヶ所)にも設置されています。
最後は、舟券の発売のほとんどを占めているネット投票(テレボート)です。三井住友、三菱UFJ、楽天銀行などの口座があれば即日登録ができ、その日から舟券を買うことができます。
なお、JRAダイレクトのように、クレジットカードで舟券を買うような仕組みはなく、また、競輪のように主催者以外の運営するWinticketやKdreams、DMM競輪による発売(どの運営も、Paypayによる決済など、決済方法が多種多様)もされていないため、今のところ、舟券の購入には現金又は預金が必要となります。
レースを見る方法
競艇のレースは、それぞれの競艇場のホームページで、ライブ、リプレイとも無料で見ることができます。もちろん、パソコンでもスマホでも大丈夫です。
また、「戸田競艇 bb」のなどと、競艇場の名前とbbで検索すればすぐに見つかる「BOAT RACE BB」というサイトにいけば、すぐに見ることができます。
競艇の特殊性
次は舟券を買うにあたって予想をする段階ですが、その前にまずは競艇と言う競技の概要と、その特殊性について説明をしたいと思います。
競艇は6艇で行います。そして、ほかの公営競技と同じく、ヘルメットや艇番を示す色が決まっており、1号艇が白、2号艇が黒、以下赤、青、黄色、緑となっています。
スタートについて
スタートは「フライング方式」と言われる競艇独自の方法で、大時計が0秒から1秒を指す間にスタートラインを切らなければいけないというものです。字面では少し分かりにくいですが、一度見てみれば理解できると思います。
そして、ここが大事なのですが、大時計が0秒を指す前にスタートラインを切ってしまった場合(フライング)と、1秒を超えてから切ってしまった場合(出遅れ)については、次のような措置が執られます。なお、この違反のほとんどがフライングなので、以降は単にフライングと言います。
① 舟券が返還される。
これが他の競技ではあり得ない事で、フライングとなった艇に関する舟券は、全て返還されます。競馬などでは、買った馬が大きく出遅れた場合は泣くしかないですが、競艇では全て返還されます。ただし、落水や転覆では返還されません。
② 選手には強いペナルティが科される。
主催者側としては、売れた舟券が全て返還されることから、たまったものではありません。そのため、フライングした選手には厳しいペナルティが科されます。(詳細は省きますが、1回のフライングで30日の出場停止、2回で即日+90日の出場停止、3回以上は引退勧告)
スタートに関して
スタートでは、言うまでもなくスタートラインにより近い方が有利であり、レース途中で抜きにくい競艇というレースの特性もあって、競艇ではかなり重要です。競馬では大きく出遅れても、結果、勝っちゃうということがありますが、競艇ではまずありえません。
しかし、フライングに対してこれだけ厳しい措置がとられるため、フライングを1回している選手はスタートで勝負できませんし、2回している選手はスタートはかなり慎重になります。
よって、出走表にF1(フライング1回)と書かれている場合はスタートで勝負はしてこないと思われますし、F2(フライング2回)の場合は、確実にスタートで後手を踏むと考えていいでしょう。
競艇はインが強い
競艇のレース結果を見ればすぐに分かりますが、競艇はイン(1~3号艇)が強く、アウト(4~6号艇)が弱く、艇番どおり、1号艇が最も強く、次に2号艇、3号艇・・・の順に弱くなっていきます。1日通して12レース全て1号艇が勝つなんてことも良くあります。ちなみに、競艇場によって多少の違いはありますが、1号艇の勝率は50%程度、6号艇は3%程度しかありません。
ただし、便宜上、1号艇が強いと書いていますが、本当に強いのは「1号艇」ではなく「1番枠」なのです。これについて説明します。なお、以降も枠番どおりの体形になるという前提で、1号艇という表現で統一します。
なお、競艇では、インの1~3号艇が前方から、アウトの4~6号艇が後方から(ダッシュ勢と言ったりする)のスタートになることが多いです。
進入について
競艇では、インへ行けば行くほど有利なのですが、なんと、競馬のように決められた枠どおりではなく、インを取ることが可能です。よって、6号艇を割り当てられても、1番枠を取ることができます。
それを「前付け」というのですが、その方法は、最初に枠番どおりに待機している場所(ピット)から素早くダッシュして、フライングスタート地点に向かう前(待機行動といいます。)に、外から内にうまく回り込んでインを奪取するというものです。字ではピンとこないですが、これも一度見てみれば分かると思います。
ならば、みんなインを狙えばいいじゃないかと思いますが、そんなに簡単なものではなく、前付けしてインを奪取するためにスピードを出し過ぎると、スタートラインに近づき過ぎて、実際のスタートで加速できないため、折角のインが生かせず、スタートで後手を踏んで話にならないという事になります。
また、インを奪取されないため抵抗した1号艇も巻き添えをくってスタートラインに近くなりすぎ(スタートが深くなると言います。)、前付けした艇と共倒れという事もよくあります。
周回と抜きにくさについて
競艇は、スタート後、コースを3週します。そして、スタートして最初のターン(1週目の第1ターンマーク)で勝負がほとんど決まります。モーターの差はあれど、直線で前の艇を抜けるほどではなく、どうしても、後ろの艇は前の艇の引き波の影響を受けるため、抜くことが難しいためです。
よって、前の艇を抜くのは、ターンする際に限られてきますが、それも1週目の第2ターンマークまでといった感じで、艇間の差がついてくる2週目以降は、順位が変わることはあまりありません。
特に、先頭艇を抜くことが難しく、順位が変わるのはほとんど2位、3位に限られます。ですので、競馬では穴馬がスタートを決めて先頭に立っても、結局は有力馬に最後は抜かれてしまいますが、競艇では格下の選手が6号艇からスタート決めて、最初のターンで大まくりを決めて先頭に立てば、ほぼ、ゴールまで先頭を守ることができます。
予想してみよう
それでは、実際に予想してみましょう。まずは出走表が必要ですが、競艇場やボートピアでは、無料で競艇場毎の出走表が配布されています。ネット投票の場合は、ネット投票のテレボートサイトで見ることができますし、各競艇場のホームページでは、予想も含めて出走票が提供されています。
競馬の予想では、実績(特に前走)や騎手、血統などを総合的に判断することが多く、出馬表のなかでも前3~5走の過去成績が重要となりますが、競艇の場合は過去成績といっても、前走が6号艇(6コース)であった場合は全く参考になりません。
人にもよりますが、概ね、次の要素によって予想するのがいいでしょう。
枠番(コース)
競艇はこれに尽きます。競艇のレーサーは4つの級に分かれており、強い順にA1,A2,B1,B2となり、さらに詳細な強さを表す指数として、勝率という指標(3~5が普通、1点、2点台はかなり弱い、6点台は強い、7点台はかなり強い)があります。
しかし、最弱のB2級の選手が1コースで、最強のA1級が6コースなら、1コースのB2の方が勝つのが競艇です。よって、まずは「枠番(コース)」が予想の基本となります。
ただし、前述のとおり「前付け」により、枠番どおりとはならない事もあります。では、どうやって枠番を検討すればいいのでしょうか。
展示について
「前付け」により枠番が変わるかどうかは、展示によってある程度分かります。競艇では、レース前に「スタート展示」というものがあり、スタートと脚の良し悪しを見ることができます。
その展示の際に「前付け」の動きがあれば、本番でも「前付け」により少しでも内の枠に入ろうとするであろうという予想ができます。本番が必ずしも展示どおりの枠とはなりませんが、例えば展示で誰も「前付け」せずに枠番どおりであれば、本番はまず枠番どおりとなるでしょう。
また、「前付け」する選手は「イン屋」と呼ばれる数名の選手に限られています。(レースにもよります。例えば競馬で言うG1に該当するSGなどの大レースの優勝戦や準優勝戦など、ココというレースでは、ひとつでも内の枠という動きから、前付けする選手もいます。)
さらに「アウト屋」と言われる6コースから進入を専門とする選手もいて、そんな「アウト屋」は1号艇を割り当てられても6コースからスタートします。これらのイン屋やアウト屋については、展示で確認するほか、ネットなどで調べてみてください。
なお、「前付け」する選手がいる、展示で動きがあったなど、枠番が変わることが予想されるレースは紛れも多いため、最初のうちは避けておき、舟券を買わないほうがいいでしょう。
勝率
出走表に書かれている5.45だとか7.03などという勝率は、選手の力を示すかなり的確な数値です。競馬でいうとレーティング=ハンデとなりますが、その競馬で言う1キロ=1馬身=0.2秒といった目安はありません。
なお、一般的には勝率が1点違うとかなりの力量に差があると言われ、女子の場合は男子と一緒に走る場合は1点引いて考えるとちょうどいい位と言われます。
しかし、やはり枠番(コース)による有利不利が強いため、例えばB1の勝率4.45の選手が1コース、A1の6.87の選手が2コースだった場合で五分五分といったところでしょうか。
展開
競馬で展開と言うと、ハイペースになるかスローペースになるか、そしてどの馬が逃げるかといったところからの予想になりますが、競艇の場合は、まずはスタートが横一線になるか、どこか遅れてへこんでしまうか、そして、それぞれの艇が差すか捲(まく)るかといったところを予想することになります。
まずはスタートですが、最近の成績、平均スタートの実績や展示から、スタートラインでの状況がどのようになるかを予想します。しかし、みなさんプロですから、基本的には横一線のスタートになるでしょう。
しかし、フライングを持っている艇がいる場合は、少し遅れたスタートになることが予想されます。それが1号艇なら2号艇が有利になりますし、2号艇が遅れそうなら3号艇が捲る可能性が出てきます。
他の艇のスタートや戦法により、差すか捲るか(又は捲り差し)は変わってきますし、一瞬の判断で追い付かないこともありますから、最初のうちはあまり展開は気にせずに予想したほうがいいでしょう。
その他
そのほかにも次のような要素がありますが、ポイントが多すぎると予想できませんので、最初のうちは、枠番、勝率(選手の級)、スタートくらいで予想するのがいいでしょう。
① 体重
基本的には軽い方が有利。軽いとスピードが出やすいが、ターンは流れやすい。重いとその逆。
② 水質
海水の場合、浮力が大きいので、体重の軽い選手はターンが流れやすいので、体重が重い方が有利。淡水の場合は、浮力が小さいので体重が軽い方がスピードが出てターンも安定するので、体重が軽い方が有利。
③ 風
追い風はインでもスピードに乗れるので、インが有利。向かい風は捲りが効きやすいので、アウトが有利。
④ モーター
特に超抜モーターと言われる良いモーター(モーターは抽選)を、A級の選手が手にした場合はどの枠でも上位にくる可能性が高い。
⑤ 地元
地元コースの場合は、声援も多く気合いの入り方も違う上、慣れているコースのためスタートが合わせやすい。
舟券を買ってみよう
まずは出走表を見て、インの選手から選手の階級(A1,A2,B1,B2)をざっと頭に入れます。
A1B1B1B1B1B2などの並びであれば、基本的には1号艇が1着になるというところから予想がスタートします。(朝のモーニングレースなどはわざとこういう構成にしている)
6号艇のB2選手は、基本的にはまずこないと見ていいので、ざっと1-234-2345あたりを買うとしますが、これでは点数が多すぎます。競艇の3連単は120通りしかなく、オッズが低いからです。偏った人気の場合は3連単のオッズが3倍なんてこともザラです。
ここで、おすすめなのが、3連単の1番人気のオッズを見て、トリガミにならないよう買う点数を決めるという方法です。例えば3連単の1番人気が123で、そのオッズが5.3倍だったとすれば、買う点数を5点以内にするのです。
最初に検討した1-234-2345の3連単では9点になりますので、これを5点以内とするなら、3着の5を抜いて1-234-234でもまだ6点ですので、最後に1点、一番高いオッズの組み合わせ(この中で最も来ない可能性が高い)か、一番安いオッズ(当たった場合、最も配当が低い)を抜いた5点を買う。
まとめ
最初はこんな感じで買っているうちに、予想の流れや買い方の方法も、自分なりのオリジナルで自分に合った方法が見つかることと思います。
要は、習うより慣れろというやつで、まずは舟券を買ってみること。そして、少し慣れた頃に、こういった類いの予想の方法などといった読み物で復習することで、より良い予想と買い方が見つかることと思います。
スタートの一瞬の判断で順位が決まる競艇、スタートから最初のターンを曲がるまでの興奮は、他の競技では味わえません。競技を見るだけでも面白いのは当然ですが、舟券を買うことでより集中度や興奮度は上がります。是非、味わってください。
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