馬券といえば枠連だった
私が競馬を始めた頃、馬券といえばイコール枠連のことで、他に発売している馬券には単勝と複勝があったが、単勝・複勝は馬券師が勝負する馬券であったり、特定の馬のファンが応援するために買うものというイメージであって、一般のファンはほぼ枠連オンリーであったように思う。
中央競馬の枠連の売上割合を見てみると、平成元年でなんと95%というから、やはり馬券といえばほとんど枠連であったということになる。ちなみに平成30年現在では、その割合はたったの3%に激減している。
いまでは、稀に枠連のオッズが馬連よりいい時に買うなど、買う場面は限定的で、今となっては不要とも思える。
そんな枠連には致命的欠陥があり、馬連が登場する平成3年までは、その致命的欠陥を補うために「単枠指定」という制度があったのだが、やはり根本的解決にはならない、こちらも欠陥だらけの制度であった。
単枠指定とは
単枠指定制度とは、枠連において問題となる「人気馬が出走取消された場合、同枠の人気薄に期待するしかない問題」を解決するため、概ね30%の支持を受けると思われる馬を「単枠指定」とし、一つの枠に1頭とする制度である。
例えば18頭立てのレースで単枠指定相当とされた馬は、まず先に枠番抽選を行い、同馬が3枠となった場合は、1枠①②2枠③④3枠⑤(単枠指定馬)4枠⑥⑦5枠⑧⑨6枠⑩⑪⑫7枠⑬⑭⑮8枠⑯⑰⑱となるわけだ。
そこで勘のいい方なら気づくだろうが、もし8枠をひくと問答無用で大外になってしまうのだ。5戦5勝の無敗で皐月賞を制したトウカイテイオーのダービーがまさにそれで、20頭立て(昔はフルゲート頭数が多かった。なお、ダービーの最多頭数は1953年の33頭。)の大外になってしまった。(しかし、その不利をものともせず勝利している。)
ちなみに、トウカイテイオーは皐月賞でも単枠指定(2頭が単枠指定、もう1頭はイブキマイカグラ)されており、この時も18頭立ての大外にも負けず勝利している。
単枠指定制度の問題点
また、単枠指定にするかどうかはJRAが決めるのであるが、基準が曖昧であり、また単枠指定されたことでJRAの「お墨付き」を得た印象を受けることや、単枠指定されたことでオッズが下がったりと、問題だらけであった。
ちなみに、単枠指定を最初に受けたのは1974年の皐月賞におけるキタノカチドキ(結果は1着、鞍上は武豊の父、武邦彦)であり、これは前年のダービーでハイセイコーが66.7%と圧倒的な支持を受けた事に発し、この年から制定された制度の初適用であった。
印象に残る単枠指定
単枠指定といって思い出すのが、1989年のマイルチャンピオンシップ。1番人気はご存知オグリキャップ。続く2番人気は武豊騎乗のバンブーメモリー。オグリキャップは前走の秋の天皇賞で武豊騎乗のスーパークリークの2着に敗れており(南井いわく、勝てたレースを自分のせいで負けた。)、鞍上の南井のこのレースにかける思いは大きかったはずだ。
この2頭が単枠指定で、2頭の枠連がなんと180円。結果はこの2頭が3着馬を4馬身離すマッチレース。しかし2頭の叩き合いではなく、先に抜け出した武豊のバンブーメモリーを内から追う南井のオグリキャップが、あの差では追いつかないだろうと思われたところから、南井の数十発はあろうかというムチに応えたオグリキャップが、ゴール寸前で差すという凄まじいレース。
この頃のオグリキャップは本当に神懸かっており、秋緒戦のオールカマーを楽勝、次走の毎日王冠でのイナリワンとの伝説の叩き合い、(競馬を始めたばかりの私は、そのレースがオグリキャップの初見。すぐさまファンになった。)そして天皇賞でのスーパークリークの2着、そしてこのマイルチャンピオンシップでの届かないと思われたところからの勝利。そして、これだけの激戦の翌週に、連闘で臨んだジャパンカップでの世界レコードの2着。
話が逸れた。単枠指定に戻ろう。このように、単枠指定馬がその「お墨付き」に応えるレースもあったが、もちろんアッサリ負けることもあり、そんな時は余計に腹がたったものだ。
制度の終焉
そんな単枠指定も、1991年の馬連の登場により、同年のセントライト記念のレオダーバンを最後に制度は廃止された。
今でも私は結構な頻度で枠連を買う。なお、枠連の制度は残ったが、単枠指定制度は廃止された。そのため、人気馬(ブチコ)が取消され、同枠の人気薄に淡い期待をするも外れ。というのもあれば、狙った馬とどちらも違う同枠代用品同士の決着で当たったりと、枠連にはドラマがある。
世界的にも珍しいこの枠連と、悪しき制度であった単枠指定。色々な思い出とともに、語り継いでいかなくてはいけない。
コメント
単枠指定の最後の勝利はトウカイテイオーのダービーでしょうか!?
少し調べてみましたが、単枠指定についてのデータは整備されておらず、最後の単枠指定馬の勝馬はすぐにはわかりませんでした。
次は、最後の単枠指定レースである、レオダーバンのセントライト記念から遡ってレースの成績を見ていくことも考えましたが、例えばnetkeibaでその頃のデータを見ても、単枠指定であったことは明記されていません。
そのレースでのレオダーバンについては、13頭立てレースで8枠であるにもかかわらず、その8枠がレオダーバン1頭であることから、単枠指定であったことが推測できますが、内枠に入った場合には単枠指定であるかどうか分からないので、それも断念しました。
なお、そのレースのレオダーバンは3着に敗れているため、単枠指定最後のレースの単枠指定馬は勝っていないことになります。
当時、単枠指定のレースがどの程度あったか覚えていないため、正確ではありませんが、平場のレースでも結構あった記憶があるので、トウカイテイオーのダービーが単枠指定馬が最後に勝ったレースではないような気がします。
重賞では最後かも知れないですね。また何かの機会に分かればと思います。答になっておらず、すいません。