逃した魚は大きい~2006 スプリンターズS

競馬のハナシ
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逃した魚

「逃した魚は大きい」という言葉は、「一度手に入れたものや手に入れかけたものは、口惜しさもあって、本来の価値より素晴らしかったと思いがちである。」という意味である。

例えば、街で見かけた元カノが、やたら綺麗に見えるといった時に使う言葉だが、これは心理的・相対的にそう感じるだけであり、実際によくよく見てみると前とあんまり変わっておらず、そんなに綺麗でもないということになる。

元々の言葉にある魚で言うと、ヒットしたが途中で逃げられた魚は、想像が膨らんで大物に思えてくるが、やはり実際は大して大物でなかったり、実は捨てられた長靴をひっかけただけだった、というのが実際のところということになる。

その分、落ち着いてくると元カノなら「良く見りゃ、そんなに綺麗でもないわ。」とか、魚なら「どうせ、下駄とかビニール袋だったんだろ。」と自分を慰めることもできるが、「逃がした馬券」の場合はその価値が金額としてハッキリ出てしまうため、慰めようがない。

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11万円の安馬

では、思い出すのも辛いところではあるが、私が痛い目にあった「逃した馬券」の話をしよう。主役は「テイクオーバーターゲット」という南半球から日本にやってきた「世界で一番安いG1馬」である。

テイクオーバーターゲットはオーストラリア生まれのサラブレッドで、短距離を中心に世界を股にかけ41戦21勝、うちG1を7勝もした名馬である。

血統的価値も少なく、生まれつき体が弱い上、骨折により膝を壊していたテイクオーバーターゲットは、11万円というサラブレッドとしてはタダ同然の値段でセリに出されてしまう。

そんなテイクオーバーターゲットを「安くて丈夫そうだ。」と購入したのが、その日20万円の予算を持ってセリに参加した、馬主兼調教師のジョセフ・ジャニアックであった。

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テイクオーバーターゲット

オーストラリアの大半の調教師がそうであるように、ジャニアックも兼業の調教師であり、朝はパン屋で、夜はタクシードライバーとして働き、その合間の昼の時間に調教をするような状況であり、廃業も考えていたという。

そんな状態でありながら、ジャニアックはゆっくりゆっくりテイクオーバーターゲットを育成し、少ない資金のなか3度の骨片手術を行う。

そして、その努力が実ったのか、ようやく4歳になってデビューするや、瞬く間に7連勝でG1を制覇する。その後は長く活躍し、最終的には630万オーストラリアドル(約5億5千円)稼いだというから凄い。

セリに出した最初の調教師にしてみれば「逃がした魚はあまりにも大きかった」という事になる。しかし、テイクオーバーターゲットが活躍しだした頃、ジャニアックにも1億円近い金額での売却の話があったというが、ジャニアックはそれを断ったというから、逃す逃さないは運ではなく、その人次第なのだろう。

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大混戦

そのテイクオーバーターゲットが1番人気となったのが、2006年のスプリンターズS。しかし、単勝オッズは4.2倍というから、いわゆる押し出された人気というやつで、日本遠征の初戦であるセントウルSでは、シーイズトウショウの2着に敗れている。

そのシーイズトウショウが単勝オッズ6.3倍で2番人気、単勝9.6倍で6番人気のチアフルスマイルまでが単勝一桁台という大混戦。私は悩んだ挙句、テイクオーバーターゲット1着固定の3連単フォーメーションを買うことにした。

これだけの混戦だから3着は総流しと決めたので、残るは2着にどの馬を選ぶかだ。その選択の前に何頭選ぶか、というか選べるかを計算した。そう、16頭立てだから1着固定で3着総流しの場合、2着に1頭選ぶごとに馬券が14点増えるので、そこを資金と相談しなくつてはいけない。

もし、2着に5頭選べば70点=7,000円になるし、10頭選べば14,000円もかかってしまう。当時の私の財力では5,000円が精一杯のところ、5,600円と少し頑張って、2着に4頭選ぶことにした。

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2着の取捨選択

まずは2番人気の取捨選択から。その2番人気は前走でテイクオーバーターゲットを押さえて勝っているシーイズトウショウ。強いのは認めるが、タイプ的にはハマれば強いが案外脆く、2着になるタイプでは無い上、馬券的妙味が薄いため、消し。

続く3番人気のサイレントウィットネスは、テイクオーバーターゲットと同じオーストラリア生まれ。しかし、こちらはデビュー前に香港に移籍し、その香港でデビューから17連勝。その後地元の香港で2着となった後、日本遠征となった安田記念を3着とした次のレース、前年の2005年スプリンターズSで勝利している。

その後、香港で4戦して善戦するも勝ち星が無いという状態で、今年のスプリンターズSへの参戦となった。昨年より順調さを欠いている今年は、人気薄なら狙たいが、3番人気では買えない。

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ステキシンスケクン

そこからザッと目を通していき、最終的に5頭まで絞った。5番人気オレハマッテルゼ、7番人気シンボリエスケープ、8番人気ビーナスライン、9番人気ステキシンスケクン、10番人気メイショウボーラーの5頭。

しかし、資金的に4頭しか買えないので、最後は人気の無い2頭のどちらを切るかで悩んだ。単勝オッズはステキシンスケクン19.9倍、メイショウボーラー20.6倍とほぼ互角だが、この2頭、経歴は随分違う。

ステキシンスケクンはまだ3歳。アーリントンCを勝ち、少し距離の長そうな皐月賞で12着と惨敗し、更にはアーリントンCと同じマイルのNHKマイルでも17着。ならばと1000mのアイビスSDに参戦し、2番人気に推されるも12着。

早熟だったのか?と思わせた次の京王杯AHで、10番人気ながら逃げ切って勝ってしまう。何とも捉えどころのない成績であるが、要するに逃げてスムーズに運べれば強いという馬。

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メイショウボーラー

一方のメイショウボーラーは、デビューから4連勝で迎えた朝日杯FSで2着の後、弥生賞、皐月賞、NHKマイルCと王道を進むも、それぞれ2着、3着、3着と惜しい競馬が続く。

その後も勝ち星に恵まれず燻りかけていたが、ジリ脚が活かせると考えたのか、ダート路線に切り替えたところ、ガーネットS、根岸Sと連勝し、1番人気で挑んだフェブラリーSでも快勝し、一気にダート王となった。

その後は芝とダート両方のレースに挑んだが、どちらでも勝てなくなりついにはダートのフェブラリーSで15着、芝の安田記念でも14着と、もう終わった馬という雰囲気になりつつあった。

このスプリンターズSには、地方の佐賀競馬でのサマーチャンピオン2着、セントウルSで7着という戦績での参戦。10番人気も頷ける。というより、単勝オッズ20.6倍の10番人気でも人気し過ぎだろう。

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運命の2択

ステキシンスケクンは、スムーズに逃げられれば頭までありそう。問題は15番枠。一方のメイショウボーラーは馬場が渋れば面白いかもしれないが、雨模様とはいえ良で出来そうな天気である。

しかし、やはりどう考えてもメイショウボーラーが上位にくる姿が浮かばない。そして、案外と早い時間でステキシンスケクンに決めた。そう、決めてしまった。

結果は逃げたテイクオーバーターゲットがそのまま逃げ切り、2番手のサイレントウィットネスが粘るところを、メイショウボーラーが差し、最後方から追い込んだ最低人気(16番人気)のタガノバスティーユが3着に食い込んだ。

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逃した大魚

レースが終わった後の虚脱感は凄かったが、払戻金を見て気を失いそうになった。3連単 2,637,570円。

見てもしょうがないのだが、改めて出馬表を見てしまう。しかし、やっぱり、どう見てもメイショウボーラーは買えない。いや、来ると分かってても私は買わない。いや、買うか。買う。買わせてくれ。

ちなみにステキシンスケクンはいいところなく、最下位だった。

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